建設機械産業を知る
土木・建築工事の現場などで地面を固めるのに使用される機械です。機械の特性によって、①静荷重(重力)を利用するもの、②こね返しを利用するもの、③振動(ゆすり)を利用するもの、④衝撃を利用するものに分類されます。単独での使用ばかりでなく、作業現場の状況に応じて複数の機械が組み合わされます。
道路工事のほか、空港の滑走路や埋立地、港湾の構築、鉄道工事、コンクリートダム建設現場などの締固めに使われます。構造物周辺の狭い場所での小規模の締固め作業に使われる小型機の製品群もあります。
これらの機械ができるまでは、締固作業は主として人力に頼っており、コートローラのようにけん引する木製ローラで作業を行っていました。
日本では、1919(大正8)年~1922(大正11)年にかけて行われた国道1号線の造成に伴って4.5~12tのスチームローラやガソリンローラが大量に輸入されました。こうした状況の中で、輸入に依存している機械の国産化を望む機運が高まり、輸入ロードローラの修理を手掛けていた酒井工業所(現・酒井重工業)が1929(昭和4)年に内燃機関搭載のタンデムローラの製造を始めました。
用途に応じて、さまざまな機種が開発されていますが、共通しているのは機械の重量化による高い締固め力によって道路構造物の高品質化、長寿命化を実現したことです。機動性の向上による施工効率のアップや少人数化、省力化なども着実に向上しています。また、機械質量以上の締固め力が期待できる「振動」「衝撃」の発生機構も締固機械の特徴といえます。
タイヤローラ
車体の前後に空気入りタイヤを配置し、機械の重量を利用して静的圧力を掛け、タイヤの特性を生かし締固めを効果的に行う機械。盛土路床および路盤の二次転圧、アスファルト舗装の表層仕上げに適しています。
マカダムローラ
鉄輪が前後に三輪配置され、主に路床、路盤、アスファルト舗装の締固めに使われる機械です。機械の重量が大きく、静荷重を利用して締固めを行います。
タンデムローラ
鉄輪を前後に一軸ずつ配置した機械です。
コンバインドローラ
鉄輪(振動輪)とタイヤを前後に配置した機械です。鉄輪とタイヤの両方を備えているため、一次転圧から二次転圧、仕上げ転圧まで幅広く適用できます。
ハンドガイドローラ
前後に鉄輪を備えた非搭乗型機械です。フレームあるいは鉄輪内部に装備した振動機構により、振動を発生させ締固めを行います。主に狭い現場や施工区端部の締固めに使用します。
平板締固機械
鋼製の平板を備えた非搭乗型の手押し式機械です。
ランマ
エンジン回転力をクランク機構によって、往復(上下)運動に変換し機械下部の打撃板で締固めを行います。
プレートコンパクタ
平板上に搭載された起振機によって振動を発生させ締固めと自走を同時に行います。
振動発生技術
鉄輪やタイヤに振動発生機構を内蔵し、対象物を振動させながら転圧することで効果的に締固めを行おうとするものです。運転席に直接振動が伝わらないように防振ゴムが使われています。
多様な振動の種類
一般的な振動方式は全周方向ですが、締固め厚さや締固め対象によっては特殊な振動方式を選択する場合もあります。また、アスファルト舗装の場合は速く小さな振動を与え、土の場合は遅く大きな振動を与えると効果的といわれています。
中折れ式フレームの採用
現在ほとんどのローラに採用されている中折れ式フレーム(アーティキュレート式)は、前後輪が同じ軌跡を描けるようにするのが狙いです。この機構の採用により、踏み残しを減らすことができました。
騒音低減
都市型工事需要が拡大する中で、音源部の遮音や風の流れを考慮した低騒音、超低騒音技術をローラに搭載しています。また、小型機の分野では、大型マフラーを搭載した上で吸音材と遮音材でエンジンをカバーした防音対策を施しています。
建設費用低減や工期短縮だけでなく、出来形管理を行える締固機械が増えてきました。特に土工においてはGPSやトータルステーションを利用し、地図データ上に転圧回数だけでなく締固め指標をリアルタイムで表示できる機械が一般的になりつつあります。また、労働災害削減の一助としてカメラやセンサーを用いて対象物を検知し、運転者への警告やブレーキ制御を行う締固機械も登場し始めています。これら技術の成熟と、無人化・省人化機械の開発が期待されています。
ヴィルトゲン・ジャパン(ハム)、関東鉄工、キャタピラー、コマツ、コベルコ建機(ボーマク)、酒井重工業、住友建機、日立建機、日立建機カミーノ、三笠産業、明和製作所