建設機械産業を知る
構造物の下の地中にあって、土木構造物や建築構造物を支えているのが「基礎」です。基礎機械とは、そうした基礎を構築するための機械であり、既製杭施工機械、場所打ち杭施工機械、地中連続壁施工機械、地盤改良機およびグラウト機械の総称です。
地形が複雑で地震も多い日本では、基礎構造部分の重要度は一層高くなっていますが、近接する構造物への悪影響の小さい施工、騒音・振動などに配慮した施工など、技術面でも難しい条件が多くなっていることが課題となっています。
コンクリートパイル・鋼管杭・鋼矢板などの既成杭の施工方式には、打撃・圧入・回転・掘削があり、それぞれに施工機械が開発されています。近年はさまざまな高支持力杭工法が開発されており、施工品質を向上させるための施工管理装置が実用化されています。
打撃方式の施工機械
環境規制が比較的少ない海上工事や山間部工事などで使用される気動パイルハンマ、ディーゼルパイルハンマ、油圧パイルハンマ、バイブロハンマのほか、鋼管杭、鋼矢板などの打込み・引抜きに使用される振動パイルハンマがあります。
圧入方式の施工機械
先に圧入した杭/矢板を把持して、その引き抜き抵抗力を反力に用いて静荷重にて圧入、引き抜きを行います。
施工方式は、単独圧入、ジェット併用圧入、オーガー併用圧入、回転切削圧入があり、施工方式と適用する杭/矢板によって施工機械が異なります。
最新の施工機械には、施工中のデータを用いた施工管理機能や自動運転などのシステムが導入されています。
また、圧入に必要な施工機械が杭/矢板上を自走移動するシステム(GRBシステム)により、仮設足場を必要としない施工が可能となります。
回転、掘削方式
アースオーガは、打撃方式に代わる施工機械として使用され、騒音・振動などの環境負荷を大きく低減することにより、既成杭のプレボーリング工法、中掘工法、回転埋設工法などに使用されます。
場所打ち杭施工機械は、アースドリル、リバースサーキュレーションドリル、オールケーシング掘削機などがあります。これらの機械で施工される場所打ち杭は、構造物の大型化とともに環境負荷が少ないことから需要が増大しています。下記の機械のほかにも、大口径ボーリングマシンや岩盤掘削孔用のダウンザホールハンマなどが場所打ち杭施工に使用されています。
回転、掘削方式
アースオーガは、打撃方式に代わる施工機械として使用され、騒音・振動などの環境負荷を大きく低減することにより、既成杭のプレボーリング工法、中掘工法、回転埋設工法などに使用されます。
アースドリル
低騒音、低振動で狭い場所での施工が可能であり、掘削口径の変更も容易です。拡底杭では直径が4.7m級の超大型機も実用化されています。
リバースサーキュレーションドリル
ほかの工法と比べて大口径・大深度の掘削が可能であり、広範囲の地盤性状に対応できます。揚泥方式はポンプサクション方式とエアリフト方式があります。
オールケーシング掘削機
ケーシングチューブを支持地盤まで押し下げながら掘削するため、確実な杭の構築が可能です。また、泥水を使用しないため発生土の処理が容易であることも利点です。玉石や岩盤などの掘削も可能な全回転オールケーシング掘削機も広く普及しています。
地中連続壁工法には鋼矢板などの直打ち工法、原位置(土中)で土とセメント系固化材を攪拌しH型鋼などを建て込む原位置攪拌工法、溝状のトレンチを掘削後に鉄筋かごなどを建て込み、コンクリートを打設するRC置換工法があります。
直打ち工法
既成杭施工機械が使用されます。
原位置攪拌工法
多軸アースオーガが多く使用され、柱列式連続壁を構築します。また、連続的にかつ等厚で原位置攪拌を行うチェーンカッタ式の掘削機も開発、使用されています。
RC置換工法
連続壁施工機械にはクラムシェルで掘削するバケット式掘削機、回転ドラムカッタで掘削しリバースサーキュレーション方式で揚泥する回転式掘削機およびパーカッションビットで掘削する衝撃式掘削機などがあります。これらの掘削機の多くは、コンピュータを利用した各種施工管理システムが搭載されています。
地盤改良工法には置換工法・脱水工法・締固め工法・固結工法などがあります。各工法の専用機もありますが、汎用機械を用いることも多く、各工法の中でも使用材料や改良原理に多くの提案がなされているために、施工機械から見て系統的にとらえることは難しくなっています。
固結工法の中で最も一般的な深層攪拌混合工法では、地中連続壁と同様に原位置(土中)で土とセメント系固化材を攪拌し、施工には単軸・多軸のアースオーガが使われ、円柱状改良コラム体を造成します。改良径は住宅向けの小径のものから施工効率を高めた直径2.5mの大口径までが実用化され機械の大型化も進んでいます。
一方、施工精度の向上に向けてメカトロ技術や確実な施工管理技術構築のためのインテリジェント化が推進されています。
基礎工事においては工法を問わず、セメント・ベントナイトなどの作液と圧送を行うグラウトミキサやグラウトポンプは重要な施工機械と位置付けられています。特に既製杭工法や地盤改良工法では、グラウトの管理は施工品質に大きくかかわってくるため、グラウト材料の開発とともにグラウト機械の高度化が進められています。
材料貯蔵サイロ、計量器、グラウトミキサ、グラウトポンプ、操作盤、記録装置などの一連の機械をシステムとして管理する管理計測システムが導入され、確実な施工管理を行うとともに省力化に貢献しています。
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