建設機械産業を知る
コンクリートポンプとは、ミキサ車などで運ばれてきた生コンクリートをホッパで受け、ポンプ機構により輸送管を通して目的の場所へ圧送する建設機械です。主なポンプ機構は、ピストン式とスクイーズ式があり、切換弁などの構造に各メーカの特徴があります。コンクリートポンプには、定置式と車載式があり、中でもブーム装置を搭載したブーム車と呼ばれるコンクリートポンプ車が広く普及。コンクリート打設工事のほとんどがブーム車により施工されているといわれています。
世界初のコンクリートポンプは1907(明治40)年にドイツで開発されました。 1923(大正12)年には米国・レックス社が実用機を発表。 1960年代半ばから技術提携による国産機種の発表が相次ぎました。国産第1号は1950(昭和25)年、石川島重工業(現・加藤製作所)がドイツのトルクレット社と技術提携した機械式クランクシャフト駆動の定置式タイプです。
1962(昭和37)年に油圧式コンクリートポンプが開発されると、操作性や作業性に限界のある機械式、水圧式はその使命を終了。国内では、 1966(昭和41)年にスクイーズ式およびピストン式のコンクリートポンプ車(配管車)が普及し始めました。 1968(昭和43)年には、配管車の作業性を改善した伸縮式ブーム付コンクリートポンプ車が登場。次いで屈折式ブーム付コンクリートポンプ車が開発され、現在これが主流になっています。海外では最近ブーム長さ70m級のコンクリートポンプ車も出始めています。
打設工事を省力化・迅速化
「もしも、世の中にコンクリートポンプがなければ、コンクリート構造物はこれほど早く高品質化されなかっただろう」といわれるほど重要な役割を果たしているコンクリートポンプ車。その活躍によって、建設現場における打設工事の省力化や工期短縮などに貢献した点が、大きな特徴といえます。
ブーム搭載で高まった機動性
本格的なブーム付コンクリートポンプ車は石川島播磨重工業(現・加藤製作所)が1972(昭和47)年に開発したPTF60B型、極東開発工業のPB10-50から普及。遠隔操作もできるブームの屈伸、旋回は現場での機動性を一段と高めました。
ブーム圧送と吐出量の増大化
コンクリートポンプ車に搭載されたブームは、油圧シリンダによる屈折式が一般的。メーカ各社は効率的にコンクリートを圧送できるSバルブ方式の採用や吐出量の増大化、ブームの軽量化に力を入れています。
車両の規制緩和で進んだ大型化
車両に関する規制緩和により、2017(平成29)年には、25tシャシに搭載したブーム長さ39mという国内最大のコンクリートポンプ車が登場。コンクリート打設工事の工期短縮や省力化を進めました。
クローラ式小型ダンプやクレーンバケット、ネコ車などによって現場までコンクリートを移送していました。
油圧技術
コンクリートポンプの進化の歴史の中で、1953(昭和28)年にドイツで開発された油圧式は、重要な役割を果たしています。これにより、コンクリートポンプ車のブームの伸縮や旋回、屈折など、主要機構の動きが油圧システムで制御できるようになりました。
振動抑制技術
コンクリートポンプのブームは年間100万回程度の振動を伴います。過剰な振動はブームの劣化を早めるので、無用な振動を発生させないことが重要です。このため、油圧回路を改良するなどの対策が試みられています。
また、海外では油圧センサ、および角度センサからの情報をコンピュータで処理し、各ブームを制御することで、振動を抑制する技術も実用化されています。
コンクリートポンプ車の機構的要点であるブームは、生コンクリート吐出時の脈動、長い先端ホースに起因する振動によって、老朽化を早める恐れがあるため、振動解消のための対策が必要とされています。
また、騒音や排出ガス軽減などの環境対策をはじめ、この機械特有の残コン処理なども取り組むべき課題です。
さらに、建設業界が抱えている人材不足、働き方改革の実施等の諸問題に対応するため遠隔管理により効率のよい施工の実現、機械からの作業情報をリアルタイムに集積・分析、取得したデータをアウトプットし機械が自動的に作業するといった無人化施工等のi-Construction実現に向けて注力することが、業界として今後の進むべき方向と考えます。
岩田商会、加藤製作所、極東開発工業、シンテック、大一・テクノ、日工、プツマイスタージャパン