建設機械産業を知る
トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーンを指し、いずれも一般道の走行が可能な移動式クレーンです。
トラッククレーン
トラッククレーンは、走行部のトラック構造により、道路の高速走行移動が可能という優れた機動性が特徴です。上部の構造上、箱型ブームで起伏と伸縮を油圧シリンダで行う油圧式と、ラチスブームで起伏をワイヤロープで行う機械式に分けられます。用途としては、土木工事、港湾での荷役作業などです。
ラフテレーンクレーン
ラフテレーンクレーンは、トラッククレーン同様、上部の構造で機械式と油圧式に分類されます。油圧式は四輪駆動・特殊ステアリング機能を備えており、現場内での機動性に優れ、小回りも利きます。カニ操行も可能です。現在では移動式クレーン全体のシェアのほとんどを占めるまでに発展しています。用途は一般住宅、ビル建設の建て方作業、建設・土木の資材積み降ろし作業など。遠隔制御方式も開発されているので、砂防ダムなどの危険な場所でも使用されています。
オールテレーンクレーン
オールテレーンクレーンは、全輪ステアリング、全輪駆動を備えており、高速移動、狭い場所での走行が可能。トラッククレーンの一種です。
油圧クレーンのルーツはパワーショベルにあると思われます。さらにそれ以前の歴史をさかのぼると、まず蒸気機関車を搭載した鉄道クレーンにたどり着きます。その後、クローラの発明に伴ってパワーショベルに装備されたクローラ走行方式が主流となり、さらにトラックキャリアに搭載した機械が出現、現在の油圧クレーンにつながっていきました。
自走可能な移動式クレーンの原型は、クレーンアタッチメントを装着した油圧ショベルです。その後、自走クレーンとして専用化し、さらに内燃機関(ディーゼルエンジン)の発達とともに大型化が進みました。
なお、トラッククレーンの国産第1号は、機械式では神戸製鋼所(現・コベルコ建機)が1953(昭和28)年に、油圧式では多田野鉄工所(現・タダノ)が1955(昭和30)年に製造したといわれています。
油圧クレーンは、油圧ポンプにて油圧源をつくり、コントロールバルブにて各機器に分配し、作動します。その利点としては作業装置をコンパクトにできることです。一方、機械式は動力源をメカニカルクラッチで伝達します。その利点は機械の作動状況が分かりやすいこと、欠点は作業装置が大きく取り扱いが困難なことです。
現在、日本における移動式クレーンの主流は油圧式ですが、取り扱いが簡単で小さいスペースで作業ができ、機動性に優れていることが、支持されている理由といえます。
トラッククレーン・オールテレーンクレーン
過負荷によるブームなどの折損事故、機体の転倒事故を未然に防止する過負荷防止装置が装備されています。これは、ブームやジブの長さ、角度、アウトリガ張り出し幅を検出してその状態での許容荷重を算出し、作業中の荷重を比較、許容限界に近付くと警報を発したり、危険な作動を停止させたりする機能を持つものです。その他旋回領域制限装置、ブーム作動範囲制限装置なども装備。また吊り荷監視カメラでオペレータの視界を補助する機能も織り込まれています。近年ではコンピュータ技術導入により性能や信頼性のさらなる向上が図られ、音声警報装置、センサなどの異常を発見する自己診断機能、特殊作業モードの選択などによって表示画面を切り替えられるカラーマルチディスプレイを備えたものもあります。
ラフテレーンクレーン
クレーン作業において、トラッククレーン・オールテレーンクレーンと同等の安全装置を装備しています。走行時の安全性向上としては、ブーム前方突き出し量の削減、走行視界性向上のためのブーム多段化や、ブームの前方傾斜化などの構造の見直しがあります。さらにブーム先端カメラや、俯瞰映像表示装置、クリアランスソナーシステム、人物検知警報装置など、安全運転のためのサポートシステムが進んでいます。
海外から輸入されるクレーンに倣って車両の軽量化、操作性、安全性の追及が不可欠です。過負荷防止装置など油圧クレーンの安全対策は現在でもさまざまな工夫がなされていますが、今後は遠隔操作や自動運転、IoT活用などによる、さらなる向上が求められています。
また道路、橋梁などの保全のため、軸重を抑えた車両の開発も今後の課題です。環境面でもさらに低騒音化、排出ガス規制適合化を進めていく必要があります。
加藤製作所、コベルコ建機、タダノ