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タワークレーン

タワークレーン

タワークレーンとは

タワー(一般的にはマストと呼ばれる)の頂部にクレーン本体(旋回体)が設置され、その旋回体がタワーを昇降する機械です。別名「クライミングクレーン」とも呼ばれ、クレーン等安全規則では「クライミング式ジブクレーン」に分類されています。

タワークレーンが登場するまで

1961(昭和36)年~1962(昭和37)年ごろまではガイデリックや三脚デリックなどによる鉄骨組立が主流でした。
ガイデリックでは、仮設構台や建物の構造部分を利用してせり上げる工法を用い、三脚デリックでは組み立てた鉄骨上に走行レールをつくり、移動台車で前進しながら鉄骨の組み立てを行うという工法が主力でした。

タワークレーン登場の背景

1963(昭和38)年7月の建築基準法の改正により従来の31mの高さ制限が廃止され、ビルの超高層化が求められたことが背景にあります。また、翌年の東京オリンピックのために、高能率で、より安全性が高く、しかも機動性のあるタワークレーンが求められるようになりました。

タワークレーンの変遷

タワークレーンは、欧州からの技術導入によって日本にもたらされました。この技術を駆使して、日本で初めて稼働したタワークレーンは、1953(昭和28)年ごろ、旧西ドイツから輸入された20t・m(※t・m=定格荷重×作業半径)級の水平ジブ式であるといわれています。
その後、国内でも開発が進められ、1960(昭和35)年、国産の第1号機が、新橋虎ノ門電気ビル工事で使用されました。さらに、1962(昭和37)年には、呉造船所(現・IHI)がジブに起状機能を有した45t・m級のタワークレーンKTK45Wを開発しました。1986(昭和61)年には、北川鉄工所が15t・mビルマンJCL015を発表しています。
1963(昭和38)年には建築基準法が改正され、「高さ制限と容積地区制を中心とする改正」が施行。従来の31mという高さ制限がなくなり、霞ヶ関ビルに代表される超高層ビル時代に突入、タワークレーンの需要の高まりとともに、技術開発も著しく進歩しました。
国内の大規模ビル建築では、180~1000t・m能力の機種が中心となっています。中でも高さ150~250m級の高層ビルが多く建設されている都市部では、クレーン能力400t・m級のタワークレーンが汎用的に使用されていましたが、2000年中ごろ以降は、高自立、コンパクトで軽量設計の新型700t・m級が400t・m級に取って代わりました。大型の900t・m級もバブル期に製造された機種は、新型の900~1000t・m級に入れ替わりました。

タワークレーンの特徴

油圧装置を利用した昇降方法の開発が、タワークレーンの技術開発の歴史における転機となりました。油圧ポンプ、油圧モータで構成IHI運搬機械JCC-V900北川鉄工所JCL1000NKされた高い動力源によって、より高層へクレーンを押し上げることが可能となり、また操作性や安全性も高まりました。
小型のタワークレーンでは、ワイヤクライミング方式が、安全性の問題より、大型と同様の油圧装置を利用するもの、電動シリンダー使用やチェンブロックを使用するものが普及しました。クライミングクレーン組立・解体作業指揮者安全教育のテキストにも、チェンブロッククライミング方式が追加されました。

操作性と安全性

電動機の制御は、ポールチェンジモーターの2段変速から、サイリスタ制御、インバータ制御と変遷し、多段速化が進みポテンショをした制御では、ほぼ無段変速が実現し、高速化も進んでいます。コンバーターを使用することにより、電源高調波対応、一次電源への回生で省エネを図ることなども行っています。運転性を左右する加減速時間もオペレーターの好みで調整可能になり、位置決め精度を上げるため、サーボモーター並の、0速での制御も登場しています。故障時の対応もインバータ、コンバータの予備機を搭載しワンタッチで切替可能な機種があり、またIoTを利用した故障診断可能な機種も出てきています。安全性確保のため、ジブの先端にカメラを取り付け、運転席のモニタで玉掛け作業や吊り荷を監視、また作業区域制限も、複数台監視を行っています。オペレーターのヒューマンエラーを防ぐため、任意位置に巻上起伏動作を行った時、速度制御を入れるなどの機能も増えています。

タワークレーン普及の影響

超高層ビルの先駆けとなった霞ヶ関ビル(1968年竣工)や、新都庁舎(1990年竣工)を含む新宿副都心、幕張メッセ(1989年竣工)、横浜ランドマークタワー(1993年竣工)、六本木ヒルズ森タワー(2003年竣工)、東京スカイツリー(2012年竣工)、国立競技場(2019年竣工)など、東京や近郊の名所となっている多くのビル等でタワークレーンが活躍しました。
建築現場以外では、明石海峡大橋の主塔工事など橋梁での主塔工事にも多く使われています。他にも、ケーソン工事、ダム打設、原子力発電所建設などにも使用されています。

タワークレーンの将来展望

高層建築物の建設は依然として多く、今後もタワークレーンの活躍が見込まれています。
今後は、IoTを利用した故障診断システム、また一歩進んだ事前の故障予知によるメンテナンス、BIMとIoTを併用した、施工管理の簡素化と効率化も今後の課題と考えられます。
また、人員不足と経験不足による、クレーンオペレーターサポートシステム、高所作業を無くすための遠隔操作なども同様に必要になると考えられます。

メーカー

IHI運搬機械、北川鉄工所