建設機械産業を知る
ドリルとはいわゆるさく岩機、およびさく岩機を搭載している機体を総称したものです。
打撃と回転力のみで岩石など比較的硬質な対象物に孔をあける機械の総称で、日本建設機械工業会では次の5種類を対象としています。
①クローラドリル
②ロータリドリル
③ダウンザホールドリル
④ドリルジャンボ
⑤アンカードリル
これらの機械のうち、①~④は発破のための爆薬を装填する孔(ブラストホール)を穿孔する機械でこれらを「ブラストホールドリル」といい、一方⑤のようにアンカー工事、薬液注入孔掘削、水井戸掘削、先進ボーリング、グラウト等に用いる機械を「ノンブラストホールドリル」と区分けされます。
ドリルは爆薬と密接な関係にあり、爆薬自体は17世紀の末頃から使われ始めたといわれています。当初爆薬を装填する孔を岩盤にあける作業は、タガネと大ハンマ—を用いた2~3人がかりの重労働でしたが、1813年にイギリスのリチャード・トレビシック(RichardTrevithick)が蒸気で回転するさく岩機を発明したのが最初と言われています。
その後、1844年には圧縮空気を動力源とする空圧式となり、1866年にダイナマイトが発明されてからはドリルの需要も爆発的に増加していきます。現在の油圧式の起源は1970(昭和45)年にフランスのモンタベール(Montabert)が発売したハイドロフォーでした。一方、我が国においては1914(大正3)年に当時の足尾銅山機械工場(現・古河ロックドリル)が自山の手掘り作業を機械化すべく製造した「足尾式三番型」が最初であり、油圧化は1977(昭和52)年に古河鉱業(現・古河ロックドリル)が発売したHCR200が国産初でした。
時代の変化とともに、近年自動制御が可能なICTの開発が進み、遠隔操作で操縦可能なBenchRemote、稼働状況監視システムCertiq(サーティック)などの最新技術をアトラスコプコ(現・エピロックジャパン)が発表しました。さらに、2019(令和元)年にエピロックジャパンのAutoFeedFoldが開発され、ワンタッチで自動フィードの位置決め(走行姿勢と穿孔姿勢)が可能になり、完全自動化に向けた開発が進められております。
「岩盤を爆破する目的で爆薬を装填するための円孔を岩盤にあける自走式せん孔機」もしくは、現代的に表現すれば、「真っ直ぐな発破孔を早く、きれいに、より経済的になおかつ安全、快適にせん孔する自走式せん孔機」と言えます。
ブラストホールドリルの用途として、明治初期から、鉱山開発だけでなくトンネルの建設(道路、鉄道、水路、ダムなど)にも使用されていました。現在の主たる需要は、トンネル建設、砕石、鉱山、土木工事向けとなっています。ドリルは新幹線のトンネル建設に大きな役割を果たしています。複数断面としては世界最長の東北新幹線の八甲田トンネル(26.5km)八甲田トンネルができるまで山岳トンネルとしては世界最長だった同じく東北新幹線の岩手一戸トンネル(25.8km)、難工事を克服した北陸新幹線の飯山トンネル(22.2km)などに使われました。また、青函トンネル、黒部第四ダム、関西国際空港、名古屋国際空港などでも活躍しました。
アンカードリルは、現在そのせん孔方式により、打撃と回転方式による全油圧式ロータリパーカッションせん孔機と振動と回転方式による全油圧ロータリバイブレーションせん孔機に分類されます。
アンカードリルは、機械の移動手段および搭載方式から次の3種類に分類されます。
いずれも回転だけのロータリ式では困難であった砂礫層・転石層など多様な地盤条件に対応でき,近年その性能の向上により200φ以上の口径も掘削可能な急速せん孔機です。アンカードリルはその機構と急速せん孔能力を生かし、次のように多様な工事に用いられます。
中空鋼ロッド
1897(明治30)年、米国で初めてさく岩機に使用。圧縮空気を孔底に送り、くり粉(さく岩機で孔を開けるときに出てくる岩石や粉塵)を強制的に排除するというもので、翌年さらに改良を加え圧縮空気の代わりに水を送り込むことによって粉塵を無害な泥水にすることに成功。これにより抗夫の作業効率、安全性が飛躍的に向上しました。このさく岩機は、「近代さく岩機の祖」ともいわれています。日本では1937(昭和12)年に大量生産が開始されました。
超硬ビット
1945(昭和20)年に、タングステンカーバイトをタガネの先に挿入したことは、岩盤せん孔の技術革命の一つに数えられます。この実用化によって、従来品に比べて30倍もの寿命を実現、中空鋼の耐久度を向上させました。日本での本格生産開始は1948(昭和23)年。
油圧式さく岩機
1970(昭和45)年、フランスで世界初の油圧ドリフタが実用化。日本では1977(昭和52)年に国産第1号機が登場しています。その後も輸入機から学び技術を向上させ、「100年に一度の発明」と現在も語り継がれている世界初の逆打撃装置が1986(昭和61)年に国内で開発され、さらに、全世界に初めて市場導入した2レバードリリングコントロールの開発など、本格的な全油圧式ドリルの時代に入りました。
ICT技術
2015(平成27)年魅力ある建設現場を目指す取り組みi-Constructionが開始。GPS機能で実機位置を把握し、事前に穿孔パターンを登録することで、ベンチでのマーキング作業無しで正確な穿孔位置と角度が得られ、また穿孔深さもベンチの起伏に関係なく孔底をそろえる穿孔作業が誰でも簡単に行えるようになりました。さらに、通信システムを通じて、所有する機械の稼働状況や燃費を遠隔地でもモニター監視が可能なり、管理データをタイムリーに入手することで機械の保守管理、稼働率の向上に役立てます。また、遠隔操作で操縦可能なドリルも開発され、過酷な現場作業で働くオペレータの安全性を確保します。IT技術との連携で、生産性と安全性の大幅な向上をもたらすだけでなく、人手不足を補うことが可能となります。
進む研究開発
完全自動さく孔作業の実現に向けて、電子制御化、ロボット化、インテリジェンス化など、IT技術との連携を行い、次世代型ドリルの研究開発を探る試みが、世界中で間断なく続けられています。
まっすぐな発破孔を速く、きれいに、より経済的に、なおかつ安全、快適に
慢性的な人手不足を解決するためにも、人口知能(AI)を用いた完全自動化の研究が今後の課題です。また、いかに人手を省いて1台あたりの生産性を向上させるか、大型化を含む省力化に向けての改善、機械のせん孔状況や燃料消費量などの機械の稼働状況をモバイル通信経由で取得、故障対策として取得した稼働情報を基にプリベンティブメンテナンスへの展開を進めることが求められています。
エピロックジャパン、MCDプロダクト、鉱研工業、サンドビック、テイサク、古河ロックドリル