建設機械産業を知る
トラック搭載型クレーンとは、トラックの荷台をカットしてキャブと荷台との間にクレーンを架装した機械で、移動式クレーンの中で最も多く生産されています。資材の運搬と積み降ろしが1台でできることが最大の特徴で、幅広い用途で運搬・荷役作業に利用されています。動力源はトラックのエンジンの動力を利用して発生させた油圧であり、 3~7段に伸びるブームを持つものが多くを占めます。ブームの構造によって「伸縮ブーム式」と「屈折ブーム式」の2種類に分けられます。吊り上げ荷重はトラックの大きさに応じて0.49t~4.9tがあり、小型から大型まで幅広いトラックに架装されています。
戦後、日本の荷役作業は人力から機械化にシフトしていきました。トラック搭載型クレーンが登場するまで、運搬と荷役作業は、トラックとクレーンの2台で行うなどしていましたが、1961(昭和36)年に共栄開発(現・古河ユニック)が欧米視察の成果としてUNIC100を開発、多田野鉄工所(現・タダノ)でも独自に開発を進め、同時期に積載可能なクレーンを発売し、1台でトラックとクレーンの2役が可能になりました。その後、ブームの多段化、吊り荷重の増加とともに、クレーン作業中の安全性の確保を目的として、ブームが設定した高さに達すると自動で停止する高さ制限装置やアウトリガの設置状態を監視することで転倒事故を防止する転倒防止装置も開発されてきました。また、作業終了時のフックの固定を自動化したフック自動格納機能や、クレーン操作と玉掛けの1人作業を可能にしたリモコン・ラジコンも開発され、さらなる効率化・省力化が図られました。
さらに21世紀を迎えるころには、ラジコンで連動操作ができる機械が開発されています。一方で環境・省エネ問題に配慮した大幅な低燃費・低騒音を実現した機械も登場しています。
ブームの構造によって、次の2種類があります。
伸縮ブーム式
日本で主流の方式であり、ブーム先端からフックをワイヤロープで吊り下げ、そのフックに荷物を玉掛けして使用します。
吊り荷に応じて玉掛け用具を選定することで、さまざまな分野で使用されています。
屈折ブーム式
欧州で主流の方式であり、ブーム先端に用途に応じた多彩なアタッチメントを装着して使用します。日本では主に林業やスクラップ処理業などで使用されています。
運輸業、土木建築業、設備工事業、造園・石材業、自動車修理業、リサイクル業と多種多様です。吊り上げ荷重が3t未満の移動式クレーンはクレーン性能検査(クレーンの継続使用に不可欠な検査)が不要で、クレーン操作に必要な資格取得(現在では小型移動式クレーン技能講習が必要)が容易だったこともあって、用途が広がったと考えられます。
2018(平成30)年に移動式クレーン構造規格の一部が改正され、過負荷を防止するための安全装置の基準が強化され、より安全にクレーン作業を行えるようになりました。一方、社会問題となっている人手不足の背景もあり、トラック搭載型クレーンの特性をよく理解していない、経験の浅い作業者が増えていますので、さらなる安全性の向上とともに、誰でも簡単に使用できるクレーンが求められています。
また、トラックに搭載する機械であるが故に、トラック側の変化への対応も必須です。今後普及していくEVトラックへの対応も、トラック搭載型クレーンの課題となっています。
加藤製作所、新明和工業、タダノ、古河ユニック、前田製作所