トラクタ（ホイールローダ）

ホイールローダとは

土木工事に伴う掘削で発生する土砂や鉱山、採石場で採掘した原石を運搬機械に積込む建設機械がトラクタです。トラクタは走行方式によってホイール式とクローラ式に大別されます。
このうち、ホイール式のものをホイールローダと呼びます。ホイールローダは農業用トラクタやフォークリフトから派生したもの、建設用トラクタをベースに専用機として開発されたものなどに分かれます。
歴史的にはクローラ式のほうが古いものの、現在はホイール式が主流となっています。

ホイールローダの変遷

1939（昭和14）年に二輪駆動のショベルローダ、1947（昭和22）年に四輪駆動のリジッドタイプ機が米国で誕生。1954（昭和29）年にはアーティキュレートタイプが米国で開発されました。わが国では日本輸送機が1949（昭和24）年に二輪駆動のSDA25を試作。1960（昭和35）年には東洋運搬機（現・日立建機）が国産初の四輪駆動機85A（リジッドタイプ）を開発しました。ホイールローダは1960年代以降の高度経済成長期に需要が急増。そうした機運に呼応して国内メーカは新機種を相次いで発売し、本格的な市場形成に弾みをつけました。

ホイールローダの用途

ホイールローダは走行、荷役という二つの作業を担っています。このため、車体前部（バケット部）に取り付けるためのアタッチメントが豊富です。現場の実情に応じて、さまざまな作業に幅広く対応できる仕組みを整えています。
ホイールローダは主として、土砂、砂利、岩石などの積込みに利用されますが、そのままでもブルドーザの代わりに整地作業などを行うことができます。
バケットの代わりにロータリ除雪機を装着すれば除雪作業に使えます。また、ロードスイーパーを装着すれば、路面清掃機の代用が可能。ログフォークを装着すれば木材の選別や運搬作業に、フォークグラップルを装着すれば牧場での干し草運搬機として使えます。このように建機としてだけでなく、道路の維持管理、林業、畜産業、荷役などに幅広く使えるのが利点です。

ホイールローダの特徴

多種多様なアタッチメントを活用することで広範な作業に使える汎用性が大きな特徴です。一般的なホイールローダに標準装備されている、油圧ショベルのバケット幅を広げたようなゼネラルパーパスバケットをはじめ、作業用途に応じたアタッチメントも豊富です。
ホイールローダは構造上、クローラ式に比べると掘削能力は劣るものの、走行速度が高いため、作業時の機動性は優れています。一般道を交通の障害にならない速度で走行できるのはクローラ式にはない長所です。
また、一般的な現場作業では、ダンプトラックと連携し、土砂の掘削や積込み、運搬などを行いますが、掘削から運搬までをホイールローダ単独で行う「ロード＆キャリー」工法を採用するケースもあります。
フレーム分類によるアーティキュレートタイプはブルドーザに比べると掘削力は及ばぬものの、地ならしや整地は可能です。骨材の積込みや除雪作業など、適用範囲が広いのも特徴です。

海外におけるホイールローダ

わが国のホイールローダは現在、世界中に輸出されています。欧州、北米、アジアなどが主な出荷地ですが、基本的な使用方法は同じです。
わが国の製品は国内ユーザからの厳しい要求水準を満たしているので、海外向けは各国の規制への対応と微調整を施すだけで出荷できます。その分、体格の大きなオペレータを無理なく収容するための運転席の改善や操作性の向上などに重点が置かれています。

ホイールローダの将来展望

ホイールローダはダンプトラック等の運搬機械とともに、過酷な作業環境で使われることの多い建機です。このため、他の車両や作業者との衝突軽減・防止システムの普及や、故障予知システムの開発が進むと考えられます。今後憂慮されるオペレータ不足や生産効率の向上に対しては、次世代通信規格「5G」により安全かつ快適な環境からの遠隔操作や、人工知能（AI）などを活用した自律稼働するホイールローダの開発が進むと考えられます。
今後憂慮されるオペレータ不足や生産効率の向上に対しては、次世代通信規格「5G」により安全かつ快適な環境からの遠隔操作や、人工知能（AI）などを活用した自律稼働するホイールローダの開発が進むと考えられます。また地球環境に配慮した排出ガス規制への取り組み、省エネ対策としてエンジン駆動方式に代わり、長時間の稼働が可能な電動ホイールローダの普及も予想されます。
また地球環境に配慮した排出ガス規制への取り組み、省エネ対策としてエンジン駆動方式に代わり、長時間の稼働が可能な電動ホイールローダの普及も予想されます。